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映画「マチネの終わりに」の詳細あらすじと感想。ラストのネタバレも。

映画「マチネの終わりに」を公開初日に見てきました。
原作は芥川賞受賞当時、最年少として話題をさらった平野啓一郎さん。
舞台はパリと東京とニューヨーク。

見るまでは、この映画も男性作家が原作の恋愛映画にありがちな
夢見がちな男と現実にはいなさそうな女の浮世離れしたストーリーかなと
思っていましたが、

実際にはとても良い映画で感動しました。
今年見た映画の中で一番かもしれません。

あらすじネタバレを含むので
読む前にお気をつけください。

 

 

目次

 

登場人物/キャスト

 

蒔野聡史(福山雅治)

デビュー20年の世界的クラシックギタリスト。
自分の音楽を見失い中。

 

小峰洋子(石田ゆり子)

パリ在住ジャーナリスト。
知り合って20年以上経つ婚約者がいる。

 

三谷早苗(桜井ユキ)
蒔野のマネージャー。蒔野に心酔している。

 

リチャード新藤(伊勢谷友介)
日系アメリカ人で洋子の婚約者。
経済学者として活躍。

 

祖父江誠一(古谷一行)
蒔野のギターの師匠。

小峰信子(風吹ジュン)
洋子の母。世界的に有名な映画監督イェルコ・ソリッチの妻。

是永慶子(板谷由夏)
レコード会社社員。
蒔野を担当する。洋子の友人。

中村奏(木南晴夏)
蒔野の師匠、祖父江の娘。

 



 

ネタバレあらすじ

 

蒔野と洋子の出会い

小峰洋子はパリ在住のジャーナリスト。
祖母の葬儀で一時帰国していた際、友人の慶子の誘いで
蒔野のギターコンサートを聴きます。

終演後、慶子は蒔野に洋子を紹介。
「どこかへ連れて行かれそうなほど良かった」と
コンサートの感想を述べる洋子に、
「舞台の上からあなたを誘っていました」と、初対面なのに口説く蒔野。

 

「幸福の硬貨」

洋子の父親は世界的に有名な映画監督、イェルコ・ソリッチ。
(再婚のため血はつながっていない。)

イェルコ・ソリッチの代表作に「幸福の硬貨」という映画があります。

洋子は昔、この映画をイメージした曲を弾く蒔野を20年前に見て、
どうしてこの人はこの曲をこんなにも素晴らしく弾けるのだろうと
嫉妬しながら聴いていました。

 

「未来だけじゃなく、過去も変わってしまうことがある」

その後、蒔野の関係者とともに洋子は打ち上げに参加します。
蒔野と洋子が2人で話していると、蒔野のマネージャー早苗が割って入ります。

福岡出身だという早苗に、自分は長崎出身だと告げる洋子。
今回の早苗の帰国は長崎に住む祖母の葬儀。

祖母は90歳だったけど、大往生ではなく、庭の石に頭をぶつけて死んでしまった。
その石は洋子が昔からおままごとのテーブルとして使っていた石。

「気にすることない」という早苗に、
「祖母が石のせいで死んでしまったことで、
その石の思い出が、ただ楽しいものだけじゃなくなってしまった。
つまり、未来だけじゃなくて過去の思いですらも現在によって変わってしまうことがあるんだ」という蒔野。

 

その後、蒔野は翌朝パリに帰国する洋子と連絡し合うことを約束して別れました。

画像引用:https://matinee-movie.jp/

 

ギターが弾けなくなる蒔野

突然、レコーディングもツアーもすべて中止したいという蒔野。
説明を求める慶子に対して、蒔野をひたすらかばう早苗。

言い争う2人に割って入り、

「急に・・、ギターを弾きたくなくなっちゃったんですよねー・・」という蒔野。

そこにパリの映像が映し出されます。
パリでテロが起きていました。
蒔野は心配で洋子に何度もメールを送りますが返事が来ません。

 

洋子はジャーナリストとして取材している途中、
会社がテロに狙われ、同僚を亡くしてしまっていました。



 

洋子からの連絡。

久しぶりに洋子から連絡がきました。
同僚を亡くしたショックで工事の音にすらこわがる洋子を
蒔野はひたすら励まし続けます。
蒔野の話で元気を取り戻す洋子。

 

パリでの再会。

蒔野は、師匠の祖父江とともにマドリードでコンサートをすることになりました。
マドリード行きの際に、パリにいる洋子に会いに行きます。

そして洋子を口説く蒔野。

「あなたが地球のどこかで死んでしまったら僕も死にます」
「あなたが自殺したら僕も自殺します」
「だから、あなたが自殺したくなったら僕も殺すことになると思ってください」

突然の告白に戸惑う洋子。

婚約者がいることを告げますが、それでも蒔野はめげません。

「あなたと毎日一緒にいたい」となおも思いを告げてきます。

洋子は、返事はマドリードのコンサートまで待ってもらうことにしましたが、
その後、婚約者のリチャードに別れを告げるのでした。

 

画像引用:https://matinee-movie.jp/

 

マドリードでのコンサート

マドリードでのコンサート。

蒔野は20歳の天才ギタリストと会いますが、
天才ギタリストは蒔野を相手にもしません。

そして、コンサートには洋子は来ませんでした。

思うような演奏ができず、コンサートの途中で蒔野は演奏をやめてしまいます。

蒔野の演奏と態度にみんなが失望しました。

 

再びパリの洋子の元へ。

洋子がコンサートに来なかった理由は、同僚が取材中事故にあってしまったからでした。

洋子の同僚をギター演奏でなぐさめる蒔野。

洋子と蒔野は心を通わせ、キスをします。

日本で再会することを誓い合いました。



 

洋子の帰国と祖父江の手術と早苗の策略によるすれ違い

洋子の帰国の日、蒔野はバスターミナルで洋子と会う約束をします。

ですがその日、師匠の祖父江が脳溢血で倒れてしまいました。
あわてて病院にかけつけたので、携帯をタクシーに置き忘れる蒔野。

マネージャーの早苗が蒔野の携帯をタクシー会社に取りに行きます。
蒔野は祖父江の手術が終わるまで病院で待つことにしました。

 

洋子が帰国して、大雨の中リムジンバスに乗りました。
蒔野にバスに乗ったことをラインで送ります。

そのラインを見たのは、蒔野の携帯を持っていた早苗でした。

早苗は2人のラインのやり取りをさかのぼってみていき、
蒔野と洋子が心を通わせていく様子を見てしまいます。

 

そして、蒔野のフリをして、洋子に
「あなたと会うと音楽がぶれるからもう会いません」というラインを送ります。

ショックを受ける洋子。

 

一方、早苗は蒔野に携帯を水たまりに落としてしまって壊したと告げ、
蒔野に代わりに使ってくれと自分の仕事用携帯を渡します。

蒔野は借りた電話で洋子に電話をしますが、
早苗が「洋子の番号」として入れていたのは早苗のプライベートの携帯でした。

早苗のプライベートの携帯につながっていると知らずに、
洋子の携帯だと信じて蒔野は留守電を入れます。

 

翌朝、早苗は蒔野に修理した携帯を渡しますが、
早苗が送ったラインのせいで、2人はすれ違ってしまいました。

会話していても噛み合いません。

なんとかして会おうとする蒔野に対して、
蒔野のニセのラインに傷ついている洋子は取り合いません。

2人はすれ違ったまま4年の月日が経ってしまうのでした・・・。

 

4年後。

洋子とのすれ違いから4年。
蒔野はギターを弾けないでいました。

また、4年の間に蒔野はマネージャーの早苗と結婚して娘をもうけていました。

一方洋子は、リチャードと結婚してニューヨークで裕福な暮らしを送っていました。
2人の間には1人息子も生まれていました。



 

祖父江の死と蒔野の復活。

蒔野の師匠の祖父江が亡くなります。
祖父江の死をきっかけに、再びギターを弾く決意をする蒔野。

追悼CDも作成し、ニューヨークでのコンサートも決まります。

 

一方、洋子はリチャードとの夫婦関係が破綻してしまっていました。
浮気を責める洋子に対して、かつての蒔野との関係を責めるリチャード。

2人は離婚することになり、子供の親権もリチャードに取られてしまいました。

 

早苗の告白①。

早苗は、ニューヨークの洋子を訪ねて、
かつてのすれ違いは自分が原因だったことを告げます。

「どうして今さら言うの?」と問う洋子に対して、
「その方が蒔野の音楽にとっていいと思ったから」と答える早苗。

早苗は「私の人生のすべては蒔野だ」と洋子に告げます。

洋子は、早苗と別れた後、石に座って涙を流すのでした。
(石は、過去を変えてしまうものの象徴として表されています)

 

早苗の告白②

早苗は、同じことを蒔野にもラインで告げていました。

あまりのことにショックを受ける蒔野。

泣き叫びながら思わず手にしていたガラスを割ってしまいます。
・・と思いきや、蒔野はギタリストなのでその衝動を実行に移すことはせず、
想像の中だけにおさめるのでした。

 

思い出のホールでの演奏と切ないラスト。

ニューヨークでのコンサートを蒔野は成功させます。

コンサートには洋子も聴きに来ていました。

翌朝、ニューヨークの公園で蒔野と洋子はすれ違います。

お互いに気付きますが、ほほえみ合って別れるのでした・・・。



 

感想

 

「人は変えられるのは未来だけだと思っているけど、
実は過去も変えることができる」

これがこの映画のテーマなのかなと思いました。

 

あの日祖父江が倒れなければ、蒔野がタクシーに携帯を忘れなければ、
早苗のラインがなければ、蒔野と洋子はうまくいっていたのかもしれない。

(そうするとお話にならないんだけど笑)

でも実際にはすれ違いが起きてしまった。

 

また、そもそも蒔野と洋子が出会わなければ、
洋子はリチャードを傷つけることはなく、
何事もなく結婚して3人で幸せな結婚生活を送れたかもしれない。

 

 

でも、どちらも悪い過去と捉えることもできるけど、
そうではない捉え方もできます。

 

蒔野とすれ違ったせいで、洋子はリチャードとのひとときの結婚生活と
リチャードとの子供を持つことができました。

蒔野と出会ったおかげで、洋子は生涯忘れられない恋の思い出を作ることができました。

 

過去はたくさんあるけど、過去の捉え方を変えることができるのは自分。

洋子は蒔野もリチャードも子供の親権も失ってしまいましたが、
それらをどう捉えてこれからを生きていくのかは
洋子次第なのかなと思いました。

 

早苗の生き方。

早苗は洋子に「私の人生のすべては蒔野だ」と言いました。
これは、一見蒔野のために生きているようでありながら、
実は自分の人生のために蒔野を利用していると思いました。

「蒔野のための人生」を自分が生きるために
蒔野の意志を無視して自分の思い通りになるようにしむけ、
洋子の人生も犠牲にしました。

ものすごく身勝手だと思いました。

ただ、早苗はそれで幸せでしょうか。

「たった三度会ったあなたが、誰よりも深く愛した人だった」

という言葉の通り、蒔野が誰よりも深く愛したのは洋子です。
早苗は蒔野と結婚して子供ももうけたけど、蒔野が一番愛した人にはなれなかった。

私は早苗のような生き方は嫌です。
ただ一緒にいるというだけで、決して一番愛された人ではない。

それよりは、自分が一番愛した人の中で、「誰よりも深く愛した人」として
心に残りたいと思いました。

一緒に暮らさなければいい思い出だけが残りますし。

(この考えは人によると思いますが・・・。)



 

蒔野の少年っぷり

蒔野が、少年のように無邪気でワガママです。

「弾きたくなくなった」という理由で、急にレコーディングやコンサートをキャンセルしたり、
会ったばかりの洋子に運命を感じて、洋子に婚約者がいるのにひたすら口説いたり、
マドリードでの演奏は洋子が来ていなかったので調子が出なくて途中でやめてしまったり・・・。

アーティストはこんなものなんでしょうか。

これは小説のお話で、小説家自体がアーティストのようなものだから、
アーティストが書くアーティストはひたすらワガママなのかなと思いました。

その蒔野も結局は早苗にいいように利用されてしまっていますが・・・。

画像引用:https://matinee-movie.jp/

 

蒔野と洋子は幸せになれたのか?

蒔野と洋子はすれ違いによって別れてしまいましたが、
すれ違いがなくてもうまくいかなかったんじゃないかなと思います。

タイタニックという映画がありますが、あの映画も最後は2人が結ばれませんが、
あの映画を見ながら、

「ジャックは繊細なアーティストだから、絶対気が強いローズとは一緒に暮らせないだろうな」と
思っていました。

アーティストが激しい恋をした相手と幸せな結婚生活を送っている様子が
あまり想像できないのですよね。

今回も、アーティストの蒔野を支えられるのは、献身的に蒔野のためだけに動ける
早苗しかいないのかもしれないと思いました。

でも、一緒に暮らさないと心の中でいい思い出だけが残ります。
その方がいいんじゃないかな・・・。

(ほんと、私の考えはこうというだけですが。)

 

画像引用:https://matinee-movie.jp/

 

翻弄された洋子

洋子は、一番かわいそうだなと思いました。
蒔野に強引に口説かれ、早苗の策略で別れさせられ、
リチャードはうまくいかず・・・。

ただ、洋子が蒔野を好きになった理由がよくわからないと思いました。

ぐいぐい来られたから好きになったのかな。

蒔野のギターの才能に惹かれたのかな。

才能のあるアーティストがぐいぐい来ると
ひかれてしまうのかなと思いました。



 

リチャードの復讐

リチャードは、洋子が好きで、最後まで好きだったと思います。
(離婚しても)

自分を裏切った洋子を一度は許そうと思ったけどできなかったか、
それか、最初から洋子に復讐するために結婚して子供を作ったか・・・。

(私はひねくれているので、こういう考え方をしてしまいます)

 

 

映画にラブシーンはある?子供と見られる?

激しいラブシーンはありません。
蒔野と洋子のキスだけなので、子供でも見られるといえば見られます。
ただ、2人のキスシーンはかなり濃厚なので、
ちょっとお互い恥ずかしくなってしまうかもしれません。

また、切ない大人の映画なので、それがわかる年齢のお子さんでないと
見るのは難しいかもしれないです。

 

 

 

とりあえず、映画はとてもおもしろかったです。

途中、早苗の策略がなければうまくいったのに!と思ってしまいますが、
それだとそもそもお話ができないんですよね。

私はサッカーの試合を見ながら、
「あーもう!相手チームの選手がいなければゴールがいくらでもできるのにー!」と
よく思いますが、それだと試合として全然おもしろくないんですよね(^^;)。

 

理不尽なことがあるからお話はおもしろい。

パリの映像もとても美しくて、
最後の、2人がほほえみ合うシーンもとても良くて、
とってもいい映画でした。

今年見た映画で一番好きです。

 

 

読んでいただいてありがとうございました。

 

記事内画像引用:https://matinee-movie.jp/